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第14話 鏡の中の巌

作者: 天咲琴乃
last update 公開日: 2026-08-11 20:41:48

「葉月を殺したのは、俺じゃない」

誰もいない岩風呂から、男の声がした。

いのりとりひとは同時に振り返った。

湯気が白く漂う浴場。

人影はない。

ただ、湯船の水面だけが揺れていた。

ちゃぷん。

「……誰?」

いのりの声が震える。

返事はない。

「いのり、出よう」

りひとが腕を掴んだ。

その瞬間。

チリン。

鈴が鳴った。

鏡を見る。

――いわおをたすけて。

さっき浮かんだ文字。

その下に、新しい線がゆっくり現れ始めた。

誰も触れていない。

なのに、曇った鏡の上を透明な指がなぞっていく。

――あした

「明日……?」

続いて、もう一文字。

――みずうみ

いのりは息をのんだ。

明日。

湖。

「葉月さんが死ぬ日……?」

そう呟いた瞬間だった。

鏡の奥に、人影が映った。

「りひと!」

振り返る。

誰もいない。

だが鏡の中にはいる。

浴場の隅。

若い男が立っていた。

「……おじいちゃん」

若き日の水瀬巌だった。

顔を両手で覆い、泣いている。

『俺は……』

声が聞こえる。

『こんなつもりじゃなかった』

「巌さん!」

いのりが鏡へ近づく。

巌の背後から、もう一人現れた。

村長だった。

『明日ですべて終わ
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